ドーパミン、悪者になってない? ― 「ドパガキ」から考えた子供の「できた!」

子供・教育

最近、ドーパミンがえらく嫌われています。

「ドーパミン中毒」「ドーパミンデトックス」、そして「ドパガキ」。

「ドパガキ」は、スマホやショート動画など、手軽に刺激を得られるものを次々と求める若者を揶揄する言葉として使われているようです。

いやいや。

ドーパミン、いつからそんな悪いヤツになったん?

ちょっと気になって調べてみました。

というのも、子供たちの教育に携わる中で、私はドーパミンを含む脳内物質の働きを、むしろ子供の「できた!」と結びつけて考えてきたからです。

「ドパガキ」と「できた!」。

同じドーパミンの話なのに、ずいぶん違います。

何が違うのでしょう。

ロボットが完成したときの「できた!」

ロボット教室の体験会では、保護者の方にこんな話をしていました。

子供が自分でロボットを作る。途中でうまくいかないことがあっても、考えたり、やり直したりする。そして、とうとう完成する。

「できた!」

そのときの達成感が大切なんですよ、と。

脳の話をするときには、ドーパミンという一つの物質だけを取り上げず、

「達成感を得ると、脳幹からプラスに働く脳内物質が出て、脳の発達にもよい影響を与える」

といった説明をしていました。

一つの脳内物質だけですべてを説明すると、誤解を招くと思っていたからです。

自分でやってみる。うまくいかなければ考え直す。必要なら少し助けてもらう。そして、「できた!」。

うれしい。

だから、またやってみたくなる。

教室で大切にしてきたのは、そんな「できた!」でした。

そもそも「ドパガキ」って何?

「ドパガキ」は、もちろん医学用語ではありません。

私がこの言葉を知った記事では、スマホなどから強い刺激を繰り返し得ることと、ドーパミンの働きを結びつけて説明していました。

一方、翌日に同じメディアに掲載された記事では、医師が、ショート動画をよく見る子供が医学的な意味で「ドーパミン中毒」になっていると証明されているわけではない、という趣旨の説明をしています。

スマホの使いすぎで、睡眠や運動、勉強など日常生活に影響が出ることはあるでしょう。

でも、「スマホを見る → ドーパミンが出る → ドーパミン中毒」と一本道で考えてしまうと、少し話が違ってきます。

そもそも、ドーパミンそのものに善も悪もありません。

ドーパミンが出れば、学びにいい?

ここで、逆のことも考えてみます。

ドーパミンが報酬系や学習に関わっている。

だったら、

「ドーパミンが出れば出るほど、子供の学びにいい」

と言えるのでしょうか。

そんなわけはありません。

ショート動画を次から次へと見るときにも、依存性薬物によって報酬系が強く刺激されるときにも、ドーパミンは関わっています。

それだけで人が賢くなるのなら、話は簡単です。

ドーパミンは、予想した結果と実際の結果との違いから学び、次の行動を変えていく仕組みにも関わっています。「こうなると思ったのに、違った」「思ったよりうまくいった」。そんな経験から次の行動を調整していく働きです。

さらに近年の研究では、ドーパミンの働きは単純な「快楽物質」や「やる気物質」、あるいは報酬予測誤差だけでは説明できないことも研究されています。

教育で大切なのは、

「どうすればドーパミンをたくさん出せるか」ではなく、

「どんな経験の中で報酬系が働き、それが次の行動へどうつながるのか」

ということです。

「できた!」までに何があったのか

ロボットを作る。動かしてみる。

動かない。

「なんでや?」

組み直して、もう一度動かす。まだダメ。

先生から少しだけヒントをもらう。また考える。もう一回やってみる。

動いた。

「できた!」

この「できた!」の前には、うまくいかなかった経験があります。

考えた時間があります。

必要なら、大人からの手助けもあります。

そして、「できた!」。

うれしい。

またやってみようと思う。

私が教室でつくりたいのは、こうした好循環です。

「できた!」という結果だけを子供に与えることはできません。

全部教えてしまえば、ロボットは早く完成します。でも、それでは子供自身の「できた!」にはなりにくい。

かといって、難しいのに放っておけば、「もう無理」で終わってしまうこともあります。

だから、子供がつまずいたときに、どこまで待つのか。いつ声をかけるのか。どのくらいヒントを出すのか。

ここが難しい。

これまで何度も書いてきた「適時適切な支援」です。

報酬系を「学び」に生かす

「ドパガキ」という言葉から始めて、改めてドーパミンについて考えてみると、昔から教室で大切にしてきたことにつながりました。

つまずく。

適時適切に支援する。

「できた!」

うれしい。

またやろう。

ドーパミンをたくさん出すことが目的ではありません。

子供が「できた!」と感じ、そのうれしさが「またやってみよう」につながっていく。

そんな経験をどうつくるか。

報酬系という脳の仕組みを教育に生かす。それが私の仕事です。

関連して読んでいただきたい記事

報酬系とドーパミンの基本については、こちらの記事で整理しています。

▶ 「できた!」はなぜ次の挑戦につながる?|脳の報酬系とドーパミン

子供が「もう無理」と感じたところから、もう一度考え直すことについてはこちらです。

▶ 「もう無理」から「もう一回」へ ― 難しい問題に向き合う力はどう育つ?

「すぐに助けない」と「必要なときに助ける」の間を考えた記事です。

▶ 「先生、合ってる?」すぐに答えない理由|子供を見て「待つ・助ける」を決める

この記事で参考にした研究・資料

小学館 @DIME
気づかぬうちに〝ドパガキ〟になっていませんか?脳に強い刺激を与えるスマホ中毒が集中力を奪う理由
2026年8月26日
→ @DIME

小学館 @DIME
我が子を「ドパガキ」にしない5つの方法
2026年8月27日
→ @DIME

Gershman SJ, Assad JA, Wilbrecht L.
Explaining dopamine through prediction errors and beyond.
Nature Neuroscience, 2024.
→ Nature Neuroscience

Kahnt T, Schoenbaum G.
The curious case of dopaminergic prediction errors and learning associative information beyond value.
Nature Reviews Neuroscience, 2025.
→ Nature Reviews Neuroscience

コメント

  1. porn pictures より:

    I like this

タイトルとURLをコピーしました