「……。」何も言わない子が伝えたかったこと|語らない子供たち ①

子供・教育

「でけへん」

このブログにも何度か登場した子供たちです。

ロボット教室で製作の途中につまずくと、

「先生、でけへん」

と助けを求めにきます。

▶関連記事:「先生、でけへん」から始まる読む力の育て方|ロボット教室で見えた子供の成長

「でけへん」と言って、パーツや作りかけのロボットを差し出し、あとは「良しなに」とばかりにこちらを見る殿様タイプ。

泣きながら、うまくいかない悔しさや悲しさを懸命に訴える、悲恋演歌熱唱タイプ。

そして、最近、私が気になるのが、何も言わない子供たち。

困った顔。悲しそうな顔。ときには無表情。

作りかけのロボットを、黙ってこちらに差し出します。

「……。」

こちらには、「困っていることを察してくれ」と言っているようにも見えます。

「どないしたん?」

もちろん、そのまま私が「ここで困っているんだろう」と見当をつけ、対処することはありません。

「どないしたん?」

「……。」

「どこで困ってるん?」

「……。」

さて、この「……。」をどうするか。

私は、子供が困っていることを予想して言葉にしてしまうのではなく、子供自ら「何がどうした」を少しずつ伝えられるように、ゆっくりと、ていねいに促してきました。

せっかく私の教室に来てくれたのです。

ロボットを作って、「できた!」「楽しかった!」だけで帰すのは、残念です。

考える。試してみる。失敗する。もう一度考える。

そして、自分がどこで困っているのかを言葉にして、必要ならそれを人に伝える。

そんな経験も積んでほしいと考えてきました。

「何が分からないか」を考える

「分かりません」

そう言えるだけでも一歩前進です。

さらに、

「ここまではできたけど、この先が分かりません」

まで言えれば、ずいぶん違います。

自分は何が分かっていて、どこから分からなくなったのか。

それを考えることは、自分の考え方や理解の状態を自分で確かめることにもつながります。

教育心理学では、自分の考え方や学び方を振り返り、必要に応じて調整していく働きを「メタ認知」と呼びます。

難しい言葉ですが、子供の姿に置き換えれば、

「どこで分からなくなったんやろ?」

「さっきのやり方では、なんでうまくいかなかったんやろ?」

と、自分の頭の中をちょっと振り返ってみることです。

こうしたメタ認知や、自分で学び方を調整する「自己調整学習」は、現在の教育研究でも重要な学びの力として研究されています。

大切なのは、いきなり「自分で考えなさい」と突き放すことではありません。

大人が考え方を見せたり、問いかけたりしながら、子供を支え、少しずつ子供自身に任せていく。

そんな働きかけが、子供が自分で学んでいくための足場になると考えられています。

ロボットを作るだけの教室にはしたくなかった

ロボット作りが楽しくて仕方がない時期も、いつか終わります。

中学生になれば、中学生なりの面白いものに出会うでしょう。

高校生になれば、また違う世界が広がります。

大人になれば、私の知らないような知的な刺激に夢中になるかもしれません。

そのときに、

「分からないから、もういい」

ではなく、

「なんでやろ?」

「もうちょっと考えてみよう」

「ここまでは分かった。でも、ここからが分からない」

そんなふうに、新しく出会ったものを面白がれる人になってほしい。

ロボット教室で私が応援しているのは、ロボットを上手に作れる子になることだけではありません。

この先に出会ういろいろな「面白い」を、自分の頭で考えながら楽しめる。

その礎を、小学生のうちに少しでもつくってあげたいと考えています。

だから、

「……。」

とロボットを差し出されたときも、すぐに答えを渡さない。

「どしたん?」

と聞く。

それも、ロボット教室でできることの一つだと思っているのです。

でも、「語らない=考えていない」ではない

ここまでなら、

「やっぱり最近の子供は、もっと自分のことを言葉にした方がいいんだな」

という話に見えるかもしれません。

でも、長く子供たちを見ていると、そう簡単な話でもないように思えてきました。

何も言わない子を見て、

「この子は、自分の困っていることを言葉にできないんだ」

そう考えて、本当にいいのでしょうか。

黙っている間、その子の頭の中では何が起きているのか。

言葉になっていないだけなのか。

助けてほしいのに言えないのか。

それとも、私たち大人が想像していないことを、一生懸命考えているのか。

私は「何がどうした」を言葉にできるようになってほしいと、子供たちに接してきました。

その考えは、今も変わっていません。

ただ、もう一つ大切なことがあると思うようになりました。

子供に言葉を求める前に、私たち大人は、その子をどれだけ見ているだろう。

語っていなかったのは、子供たちです。

でも、分かっていなかったのは、私たち大人の方なのかもしれません。

「語らない子供たち」。

しばらく、そんな子供たちの話を続けてみようと思います。

この記事を書くにあたって参考にした研究・資料

Dignath C, Büttner G
Components of Fostering Self-Regulated Learning among Students. A Meta-Analysis on Intervention Studies at Primary and Secondary School Level.
Metacognition and Learning, 2008.
→ Springer

van de Pol J, Volman M, Beishuizen J
Scaffolding in Teacher–Student Interaction: A Decade of Research.
Educational Psychology Review, 2010.
→ Springer

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