「ママ、見て!」を見逃さない|ロボット教室で見た、子供が喜びを伝えたい瞬間

子供・教育

ウチのロボット教室では、体験会の初めに、授業で作るロボットを実際に動かしてみせることにしています。

その日の体験会で見てもらったのは、中級以上の子供たちがその月に取り組む「ムシ型ロボット」でした。

スイッチを入れると、まず体を丸めてダンゴムシのような姿になります。

そこで「ドン」と音を出す。

音センサーが反応して「ブーッ」とブザーが鳴り、モーターが逆回転。丸まっていた体が開きます。

そこから6本の足でカサカサと5秒間前進。

止まったと思ったら、またモーターが逆回転して、クルッとダンゴムシに戻ります。

子供たちは、

「えぇっ!」

と目を丸くしました。

⇒ 実際に体験会で見てもらった「ムシ型ロボット」です。

今でも覚えているのは、ロボットの動きだけではありません。

そのときの親子の様子です。

一人のお母さんは、我が子と一緒になって、

「えーっ!」

と驚き、子供と顔を見合わせていました。

一方、ママ友同士で参加していたお母さんたちは、話に夢中になっていました。

その子供たちは、「ママ、ほら、ほらっ!」とでも言うように、何度もお母さんの方を振り返ります。

でも、お母さんたちは気づきません。

その様子を見ながら、残念に思いました。

こんなに驚いて、こんなにうれしそうにしている。

そして、その気持ちを真っ先にお母さんに伝えようとしている。

その瞬間を、一緒に感じてほしいなあ、と。

「ママ、見て!」は、ロボットを見てほしいだけ?

子供が何かに驚いたとき、

「ママ、見て!」

「先生、見て!」

と大人を呼ぶことがあります。

ロボット教室でも、よくあります。

難しかったところができた。

自分で作ったロボットが、思い通りに動いた。

思いがけない動きをして、おもしろかった。

そんなとき、子供はロボットだけを見ているとは限りません。

こちらを振り返る。

そして、大人が見ていることが分かると、またロボットに戻る。

そんな姿を見るたびに、

「自分が感じた驚きや喜びを、誰かと一緒に感じたいんだろうな」

と思ってきました。

そこで、改めて調べてみました。

喜びを一緒に受け止めることも研究されている

発達心理学には「感情の社会化(emotion socialization)」という研究領域があります。

言葉だけを見ると難しそうですが、私たちが普段していることと、そう遠い話ではありません。

子供が喜んだとき、大人はどう応えるのか。

悲しんでいるときは、どうするのか。

子供と感情について、どんな話をするのか。

そして、大人自身はどのように感情を表すのか。

こうした日常の関わりと、子供が自分の感情を理解したり調整したりする力との関係が調べられています。

さらに、これまでに行われた複数の研究結果をまとめて分析する「メタ分析」でも、幼い子供を持つ親が、子供の感情への応じ方などを学ぶ取り組みによって、親の関わり方だけでなく、子供の感情面の力にも改善がみられたことが報告されています。

ここでおもしろいと思ったのは、もう一つの研究です。

うれしいことは、誰かに伝えたくなる

心理学では、自分に起きた良い出来事を誰かに伝え、その喜びを共有することについても研究されています。

英語では「capitalization」と呼ばれています。

たとえば、

「今日、こんなことができた!」

「こんなおもしろいことがあった!」

と誰かに話す。

そして相手が、

「ほんまや!」

「それはうれしいな」

と一緒に喜んでくれる。

大人を対象にした研究では、良い出来事を誰かに伝えることは、日々のポジティブな感情や幸福感と関係していました。また、相手が積極的、建設的に応じることは、親密さや人間関係の満足度などとも関係していました。

また、10~14歳の子供と保護者の日常生活を調べた研究では、子供が良い出来事を親に伝えたあと、興奮や元気さといったポジティブな感情が高まっていました。親が肯定的に、熱意をもって応じた場面では、親の側にも同じような変化がみられています。

これを読んだとき、あの体験会を思い出しました。

「ママ、ほら、ほらっ!」

とでも言うように、何度も振り返っていた、あの子たちです。

もちろん、あの子たちが何を考えていたのかは本人たちにしか分かりません。

でも、

「これ、おもしろい!」

「びっくりした!」

という気持ちを、お母さんにも伝えたかった。

そう考えると、あのときの姿がとても自然に思えます。

「できた瞬間」をなるべく逃さない

ロボット教室では、子供が成功した瞬間を、なるべく逃さないようにしています。

大げさに褒め続けるわけではありません。

「すごい、すごい」と何でも褒めればいいとも思っていません。

でも、さっきまでできなかったことができた。

工夫したら、ロボットがうまく動いた。

そんなときには、

「おっ、できたやん」

「さっきよりグーンとうまくなったね」

と、ときどき言葉にします。

すると子供自身も、

「あ、自分はできるようになったんだ」

と気づくことがあります。

成功すること。

成功した自分に気づくこと。

そして、その喜びを誰かと分かち合うこと。

どれも、子供にとって大切な経験ではないでしょうか。

「ママ、見て!」と振り返った、そのときに

あの体験会から何年もたっています。

それでも、

「ママ、ほら、ほらっ!」

とでも言うように、何度も振り返っていた子供たちの姿を覚えています。

別に、大げさに褒めなくてもいい。

難しい脳科学の知識もいりません。

子供が何かに驚いた。

何かができた。

うれしそうな顔で、こちらを見た。

そんなとき、

「ほんまや!」

「できたね」

と一緒に喜ぶ。

ほんの一言でいい。

言葉はなくても、微笑んであげるだけでもいい。

子供が「見て!」と振り返ったその瞬間を、一緒に感じてみる。

あの日の体験会を思い出すたびに、そんなことを考えます。

この記事を書くにあたって参考にした研究・資料

England-Mason G, Andrews K, Atkinson L, Gonzalez A
Emotion socialization parenting interventions targeting emotional competence in young children: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Clinical Psychology Review, 2023.
PubMed

Gable SL, Reis HT, Impett EA, Asher ER
What do you do when things go right? The intrapersonal and interpersonal benefits of sharing positive events.
Journal of Personality and Social Psychology, 2004.
PubMed

Griffith JM, Hankin BL
Affective Benefits of Parental Engagement with Adolescent Positive Daily Life Experiences.
Journal of Youth and Adolescence, 2021.
PubMed

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