自宅でテレビを観ていたときのこと。
「あれ? この人の名前、何やったっけ……?」
「えぇ~ぇ! 上戸彩やん!」私のド忘れに、隣で妻が仰天。
「まあ、30歳を過ぎれば大脳の神経細胞ネットワークは年々崩れていくばかり。成長することも再生することもないから、ジジィのド忘れなんてシャーないやん」
……と、かつては私も諦め顔で言い訳をしていました。しかし、最新の神経科学(ニューロサイエンス)の世界に触れて驚きました。どうやら、私たちの脳は「ジジィになっても進化し続ける」というのが、現代の決定的なエビデンス(科学的根拠)だったのです。「もう年だから、新しいことは覚えられない」と諦めるのは、今日で終わりにしましょう。何歳からでも脳のパフォーマンスを劇的に向上させる、驚きのメカニズムと具体的なトレーニング法をご紹介します。
脳の「部品」は増えなくても、「配線」はリフォームできる
確かに、脳の「部品」である神経細胞(ニューロン)そのものが爆発的に増えるピークは、10代前半までです。これは子どもの脳のゴールデンタイム。
しかし、大人になってから大切なのは、部品の数ではなく「部品同士のつなぎ方(配線の質)」です。人間の脳の配線には、「ミエリン(髄鞘)」という絶縁体のカバーが巻き付いています。このカバーが厚くなると、なんと脳内の電気信号の伝達速度が最大100倍に跳ね上がります。道路で言えば、ガタガタの一般道が「超高速道路」に変わるようなものです。
かつて、このミエリン化は若い頃に終わるとされていましたが、近年の研究で「50代、60代、あるいはそれ以降であっても、脳を正しく使い続ければ、ミエリンは厚く太く成長し続ける」ことが証明されました。細胞自体は増えなくても、脳内のネットワークは何歳からでもリフォームして進化させられるのです。
実践!大人の脳を劇的に若返らせる「2大トレーニング」
では、どうすれば脳の高速道路(ミエリン)を強化し、同時に記憶の入り口である「海馬」を鍛えることができるのでしょうか。今日から自宅でできる具体的なステップをご紹介します。
【海馬を鍛える】短期記憶の「痕跡づくり」
短期記憶の「痕跡づくり」まずはド忘れを防ぐためのベースキャンプ、海馬のトレーニングです。海馬は「繰り返し」によって短期記憶を長期記憶へと定着させます。忘れる前に、あえて覚え直して脳に痕跡を刻みましょう。
・「書けない漢字」をあえて手書きする
スマホやパソコンの普及で、読めても書けない漢字が増えていませんか? 私は「黴(かび)」「膾炙(かいしゃ)」「真贋(しんがん)」「和気藹々(わきあいあい)」などの漢字をこまめにメモし、毎日手書きする習慣をつけています。手を動かす刺激がダイレクトに脳に響きます。
・「長い固有名詞」を毎日声に出す
覚えられない長い海外の人の名前や単語は、毎朝口に出して3回唱えます。例えば「セルゲイ・ラフマニノフ」「サヘラントロプス・チャデンシス」「ウルズラ・フォン・デア・ライエン」など。
耳と口を連動させることで、海馬の引き出しがスムーズに開くようになります。
【大脳皮質を鍛える】ミエリンを厚くする「初体験」
大人の脳でミエリンを増強するための絶対条件、それは「強い知的好奇心」と「少しの負荷」です。ただ同じルーティンを繰り返すだけではミエリンは厚くなりません。
・「新しいジャンル」の音楽や本に触れる
私が最近、小説をきっかけにロックバンドの「レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)」を聴き始めたように、これまで素通りしてきたカルチャーにあえて触れてみてください。脳内でドーパミンやアセチルコリンが分泌され、ミエリンを作る細胞(グリア細胞)が猛烈に働き始めます。
・利き手と逆の手を使ってみる
歯磨きやスマートフォンの操作、ドアを開ける動作などを、あえて「左手(利き手と逆)」で行います。いつもと違う不自由な刺激に対して、脳は大急ぎで新しい神経の配線をつなぎ替えようとフル稼働します。これがミエリンを太くする最高の負荷になります。
まとめ:心が動けば、脳は何歳からでも進化する
生活習慣の改善(適度な運動、質の良い睡眠、バランスの良い食事)を土台にしつつ、日々の生活に「ワクワクする初体験」と「ちょっとした反復」を取り入れること。
子どもの脳が「新築の家を建てる時期」なら、私たちの脳は「自分の好みに合わせて住みやすくリフォームを重ねる時期」です。
「もうジジィだから」とアンテナを閉じてしまうのはもったいない。
「あれ? この人の名前なんやったっけ?」となったら、それは脳をリフォームする絶好のチャンスです。楽しんで、面白がって、今日から一緒に脳をワクワクさせていきましょう!


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