風鈴を見るだけで涼しく感じるのはなぜ?脳がつくる「涼しさ」の正体

子供たちに

今年も梅雨が早く明け、暑い夏がやってきましたね。

先日、テレビのワイドショーで全国各地の風鈴が紹介されていました。

ガラスの風鈴、南部鉄器の風鈴、陶器の風鈴……。

あれ? やさしい風を感じる。風鈴の音が聞こえる。

もちろん、部屋には風が吹いていません。

テレビから風鈴の音が聞こえるわけでもありません。

それなのに、風や音を感じる。

「風が吹いているなあ。」

「チリ〜ン、チリ〜ンという音が聞こえてきそうだ。」

そんな気持ちになったのです。

実際には何も起きていないのに、脳の中では風まで感じていました。

脳は「見ている」のではなく、「体験を作っている」

これは気のせいではありません。

近年の認知神経科学では、脳は外から入ってきた情報をそのまま受け取るだけではなく、過去の経験をもとに次に起こることを予測しながら世界を認識していると考えられています。

風鈴を見ると、

「風が吹く。」

「チリンと鳴る。」

「なんだか涼しい。」

という一連の体験を、脳が過去の記憶から組み立てているのです。

だから、画像を見るだけでも心地よさを感じるのでしょう。

子供は大人ほど風や音を思い浮かべられないことがある

ここで子供たちのことを思いました。

幼い子供は、大人ほど風鈴の映像から風や音を豊かに思い浮かべられないことがあります。

その土台になる経験がまだ少ないからです。

夏祭りで風鈴を見たこと。

縁側で風に揺れる音を聞いたこと。

祖父母の家で涼しい夕暮れを過ごしたこと。

そんな一つ一つの体験が、脳の中にエピソード記憶として蓄えられます。

その記憶が増えるほど、映像一枚からでも多くのことを感じ取れるようになっていきます。

五感で体験することが、学びの土台になる

私は長年、子供たちと接してきました。

勉強ができる子には共通点があります。

それは、「知識が多い」ことではなく、「体験が豊か」であることです。

虫を捕まえたこと。

海で波の音を聞いたこと。

山で風を感じたこと。

料理の匂いをかいだこと。

そして、その一つ一つを「面白いな」「不思議だな」と意識したこと。

そうした五感を通した体験は、脳の中でさまざまな記憶と結び付き、新しい学びを理解する土台になります。

脳は知識を詰め込むだけでは育ちません。

五感で感じた体験が、新しい知識と結び付くことで、脳の神経回路はより豊かに広がっていきます。

まとめ

風鈴は、ただ涼しげな飾りではありません。

一枚の映像から風や音まで思い浮かべられるのは、脳が過去の経験を使って世界を豊かに感じ取っているからです。

だからこそ、子供たちには、本物に触れ、五感を使い、たくさんの体験を積んでほしいと思います。

今日、テレビに映る風鈴を眺めながら、私はあらためて「経験こそが、脳の豊かな世界をつくっていく」と感じました。

この記事で参考にした資料

  • Clark, A. (2013). Whatever next? Predictive brains, situated agents, and the future of cognitive science. Behavioral and Brain Sciences.
  • Friston, K. (2010). The free-energy principle: a unified brain theory? Nature Reviews Neuroscience.
  • Tulving, E. (1972). Episodic and Semantic Memory.
  • Barrett, L. F. (2017). How Emotions Are Made.(予測する脳の考え方を一般向けに解説)

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