陽動作戦② 芦屋マダム作戦 | 子供に合わせる。でも、合わせすぎない

子供・教育

子供が「今日はこれ、やりたくない」と言い出したら、どうしますか。 

別のことに変更する? 予定どおり取り組んでもらう? それとも、今日は見送る?

私たちは、子供たちと向き合う中で、こうした判断を繰り返してきました。その対応の一つが、ちょっと変わった名前の「芦屋マダム作戦」です。

「あなたは、これよ。召し上がれ」

2011年のコラムには、こんなことも書いています。

「芦屋マダム作戦:積極的回避(他のことをしようなどと提案する)の子が何を言ってきても、『あなたは、これよ。召し上がれ』『あなたは、これよ』『あなたは、これよ』とやや冷たく、笑顔で提示し続ける。」

なかなか手ごわいマダムです。

ただし、子供が嫌がったら、いつでもこの作戦を使うわけではありません。

変更する、続ける、今日は見送る

ウチの頭脳開発の教室では、子供ごとに特別なカリキュラムを組んでいました。

毎回取り組むトレーニングもあれば、2回に1回、あるいは月に1〜2回というものもあります。それぞれ、伸ばしたい力や目的が違います。

子供が予定の課題を避けたがるとき、私たちには三つの選択肢がありました。

一つ目は、別のトレーニングに変更すること。

同じような効果が期待できる課題があれば、そちらに切り替えます。

二つ目は、予定どおり取り組んでもらうこと。

ここで変更すると、今後も同じ課題を避けることにつながりそうだ。そう判断したときに登場するのが、芦屋マダムです。

もちろん、子供の表情や反応を見ながら進めます。

三つ目は、その日は見送ること。

無理に続けず、次回に改めて挑戦します。必要なら指導員同士で打ち合わせ、次の対応を考えます。

つまり、芦屋マダム作戦は、子供に言うことを聞かせるための決まり文句ではありません。

この子の力を伸ばすには、今、何をどうするのがよいか。

その判断の結果として選ぶ、一つの対応なのです。

子供の気持ちを尊重することと、何でも変更することは違う

ここで、最近の教育研究を一つ紹介しましょう。

2025年に発表された94研究をまとめた分析では、教師による「子供の自主性を支える働きかけ」と「目標や取り組み方を明確に示すこと」は、互いに補い合う関係にあると報告されています。

難しい話に聞こえますが、要するに、

子供の気持ちを大切にすることと、大人が必要な方向を示すことは、両立できる。

ということです。

私たちが経験から使い分けてきた対応を、別の角度から考えるヒントになる研究です。

大阪のおばちゃんが、芦屋マダムに変身する

前回紹介したのは、指導員が明るく元気に働きかける「大阪おばちゃん作戦」でした。
関連記事:陽動作戦① 大阪おばちゃん作戦 |「やりたくない」の空気を変える

ところが、同じ指導員が、次の瞬間には芦屋マダムに変身することもあります。

「さあ、やってみよう!」と盛り上げる方がよいときもあれば、笑顔で落ち着いて課題を示す方がよいときもある。

もちろん、指導員にも得意不得意があります。

大切なのは、作戦に子供を合わせるのではなく、子供の状態や課題の目的に応じて、対応を選ぶことです。

芦屋マダム、今ならこう書く

2011年のコラムには、「やや冷たく、笑顔で」と書いていました。

この「やや冷たく」は、今なら「落ち着いて、毅然と」と表現したいところです。

子供の提案を受け入れることもあれば、受け入れないこともある。

必要に応じて理由を説明することもあれば、「ダメなものはダメ」と、きっぱり伝えることもあります。

大切なのは、目の前の子供に、今、どんな対応が必要なのかを見極めることです。

柔軟に変えることも、あえて変えないことも、子供を伸ばすための判断です。

その判断を誤らないようにすることこそ、指導員の仕事です。

さて、次回は「京都ぶぶ漬け作戦」。

大阪のおばちゃん、芦屋マダムと来て、今度は京都です。

子供への対応にも、いろいろな引き出しがあるものです。

この記事で紹介した研究

子供の自主性を支えることと、明確な指導を組み合わせることに関する研究
教師の自主性支援と、目標や取り組み方を明確に示す指導について、94研究をまとめて分析した2025年の研究。

Patzak, A., & Zhang, X. (2025). Blending Teacher Autonomy Support and Provision of Structure in the Classroom for Optimal Motivation: A Systematic Review and Meta-Analysis. Educational Psychology Review.
→ 研究論文(Educational Psychology Review)

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