最近、AIを使う機会が増えました。
調べものをする。
文章を整える。
アイデアを出してもらう。
分からないことを質問する。
そんなとき、私は、つい、
「ありがとう」
「お願いします」
「助かりました」
と言ったり、書いたりしてしまいます。
相手は機械です。
だから、
「そんな丁寧な言葉、必要ある?」
と言われれば、たしかにその通りかもしれません。
でも、私は、AIとのやり取りを続けるうちに、少し違うことを考えるようになりました。
AIにどう話しかけるかは、自分が普段どんな言葉を使っているかを映す鏡なのではないか。
今回は、そんな視点から、AIとの付き合い方と、子供や周囲の人への接し方を考えてみます。
AIは「丁寧に言えば賢くなる」わけではない
まず、ここは整理しておきたいところです。
AIに、
「お願いします」
「ありがとう」
と書けば、それだけで回答の質が劇的に上がるわけではありません。
AIから良い回答を得るために大切なのは、
何をしてほしいのかを明確に伝えること。
たとえば、
「これ直して」
より、
「この文章を、保護者向けに、専門用語を減らして、やわらかい表現に直してください」
と伝えた方が、こちらの意図は伝わりやすくなります。
AIは、入力された内容や文脈、指定されたトーンなどを手がかりにして応答します。
だから、
丁寧だから良い回答になるのではなく、分かりやすく具体的に伝えることが大切。
ここは、人とのコミュニケーションにも似ています。
それでも私は「ありがとう」と言う
では、AIに「ありがとう」と言う意味はないのでしょうか。
私は、そうは思いません。
AIのためというより、自分のためです。
普段から、
「やって」
「早くして」
「それ違う」
という言葉ばかり使っていれば、その言葉遣いは習慣になっていきます。
逆に、
「お願いします」
「ありがとう」
「ここは少し違うので、もう一度考えてください」
と伝える習慣があれば、人に対しても似た言葉が出やすくなるかもしれません。
AIには人間のような感情がありませんから、乱暴な言葉を使ってもAIが傷つくわけではありません。
でも、その言葉を使っているのは私たち自身です。
AIに対して「やれ」「違う」「早くしろ」という言葉を毎日のように使うのか、「お願いします」「ここは少し違うので、もう一度考えて」と伝えるのか。
相手がAIであっても、日頃どんな言葉を使うかは、自分自身の言葉遣いの習慣と無関係ではないでしょう。
私は、そこが面白いと思っています。
子供は、大人の言葉をよく見ている
教育の現場に長くいると、
子供は、大人が言っていること以上に、大人が普段どう話しているかをよく見ている
と感じます。
「人には優しくしなさい」
と言いながら、大人が周囲に命令口調ばかり使っていれば、言葉に説得力はありません。
逆に、
「ありがとう」
「どう思う?」
「手伝ってくれて助かったよ」
という言葉が自然に飛び交う家庭では、子供もそうした言葉を覚えていきます。
これは、「子供は、親の言葉をそのままコピーする」という単純な話ではありません。
発達心理学では、親がどんな感情を表現するか、子供の感情にどう反応するか、感情についてどんな会話をするかといった日常的な関わりが、子供の感情調整や社会情緒的な発達と関係することが研究されています。
つまり、
言葉は、子供に何かを教える道具であると同時に、日々の関わり方そのものでもある
ということです。
AIとの会話は「言葉遣いの練習場」になる
私は、AIとのやり取りには一つ面白い使い方があると思っています。
自分の言葉遣いを試せることです。
同じ内容でも、
「これやって」
と頼むのか、
「この目的で使いたいので、こういう形にしてください」
と頼むのか。
返ってくる答えも変わります。
そして、自分自身も、
「どう伝えれば相手に分かりやすいか」
を考えるようになります。
これは、子供に声をかけるときにも似ています。
「ちゃんとしなさい」
より、
「ここまでできたら、一度見せて」
の方が伝わりやすいことがあります。
「なんでできないの?」
より、
「どこで分からなくなった?」
の方が、次の行動につながることがあります。
言葉を変えると、相手の反応も変わります。
AIとの会話は、そのことを安全に試せる場所でもあります。
まとめ|AIへの「ありがとう」は、AIのためというより自分のため
AIに丁寧に話せば、脳が若返るという話でもありません。
私が大切だと思うのは、もっとシンプルなことです。
自分は、どんな言葉を使う人でいたいか。
AIに向けた言葉も、人に向けた言葉も、使っているのは自分です。
「お願いします」
「ありがとう」
「ここは違うと思う」
「もう少し詳しく教えて」
そんな言葉を自然に使えるなら、それは悪い習慣ではないでしょう。
そして、その言葉遣いは、いつか子供や家族、周囲の人との会話にも表れるかもしれません。
私はこれからも、AIにたぶん「ありがとう」と言います。
AIが喜ぶからではありません。
その方が、自分らしく会話できるからです。
この記事を書くにあたって参考にした研究・資料
・OpenAI Help Center. How do I create a good prompt for an AI model?
・OpenAI Help Center. Prompt engineering best practices for ChatGPT.
・Edler K, Valentino K. Parental self-regulation and engagement in emotion socialization: A systematic review. Psychological Bulletin, 2024.
・Eisenberg N, Cumberland A, Spinrad TL. Parental Socialization of Emotion. Psychological Inquiry, 1998.
・Hajal NJ, Paley B. Parental emotion and emotion regulation: A critical target of study for research and intervention to promote child emotion socialization. Developmental Psychology, 2020.
・Boggiss AL, et al. A systematic review of gratitude interventions: Effects on physical health and health behaviors. Journal of Psychosomatic Research, 2020.
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