日常の何気ない瞬間に、これまで全く知らなかった未知の言葉や文化と出会う。そんなとき、どうしていますか。
先日、ある本を読んでいると「レッチリ」という言葉が目に飛び込んできました。文脈から推測するに、どうやら音楽関係の言葉のようです。気になった私は、すぐにスマートフォンを取り出して検索してみました。
そこで初めて知ったのは、それが世界的な伝説のロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」の略称であるということ。名前こそ聞いたことはありましたが、まさかそんなファンキーな略され方をしていたとは知りませんでした。
知的好奇心を刺激された私は、自宅のスマートスピーカーに向かって「アレクサ、レッチリをかけて」と話しかけてみたのです。通じるかな、とやや不安でしたが、次の瞬間、泥臭くも圧倒的に格好いい重低音とカッティングギターが部屋に響き渡りました。私は一瞬で彼らの音楽の虜に。
いくつになっても、新しい世界の扉が開き、自分の世界がぐっと広がっていく瞬間は、胸がすくような高揚感があります。これこそが、大人が味わうべき「学ぶ楽しさ」であり「知る喜び」の本質です。
ちなみに、この素敵な出会いのきっかけをくれた「ある本」とは、津村記久子さんの著書『水車小屋のネネ』です。500ページ近くある重厚な長編小説ですが、登場人物たちの織りなす温かい日々に心を激しく揺さぶられ、時間を忘れて一気読みしてしまいました。
実は、この「読書に深く没頭すること」や「新しい音楽に挑戦すること」は、私たちの脳にとって最高のエイジングケアであることが、最新の脳科学で証明されています。
人間が「もっと知りたい!」という好奇心を満たしたり、新しい体験に触れて「へぇ、面白い!」と心を動かされたりする時、脳内では「ドーパミン」という神経伝達物質が大量に分泌されます。ドーパミンは通称「やる気ホルモン」や「快楽物質」とも呼ばれ、脳の神経ネットワークを強烈に活性化させ、記憶力や集中力を飛躍的に高める働きを持っています。
年齢を重ねると、どうしても日々の生活がパターン化し、未知との遭遇は少なくなっていきます。一方で、子供たちは毎日が新しい発見の連続ですが、それが日常すぎて、一つひとつの「知る喜び」を噛み締めるまでには至りません。だからこそ、様々な経験を積んだ大人が、意識的に新しい刺激に出会い、知的好奇心を満たすことには計り知れない価値があるのです。
最新の医学的エビデンス(科学的根拠)によると、ドーパミンが定期的に分泌されるライフスタイルを送っている人は、脳の「神経可塑性(しんけいかそせい)」が非常に高く保たれると言われています。神経可塑性とは、脳の神経回路が新しく変化したり、柔軟につながり直したりする能力のことです。
つまり、日々の暮らしの中で「知る喜び」を感じ続けることは、脳を物理的に若々しく保ち、認知機能の衰えを防ぐための強力なブレーキになる可能性を秘めているのです。
素晴らしい小説との出会いが、レッチリの音楽へとつながり、私の脳と心を刺激してくれたように、大人の学びには終わりがありません。
肉体の衰え(サルコぺニアなど)を防ぐために食事や運動が不可欠であるように、脳の健康を保つためには「知的好奇心」という心の運動が絶対に必要です。
小さな疑問をそのままにせず、一歩踏み込んで調べてみる。そして新しい世界を体験してみる。そんな大人の「学ぶ楽しさ」を、ぜひ今日からあなたの日常にも取り入れてみませんか。


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