まだ知らない世界があった。― 世界が広がる瞬間 2nd ―

大人に

休日の朝、何気なく見ていたワイドショーで、「河鍋暁斎展」が神戸市立博物館で開催されていることを知りました。

河鍋暁斎?

正直に言うと、初めて聞く名前です。

でも、画面に映った作品を見た瞬間、手が止まりました。

「なんや、この絵。」

浮世絵とも違う。

日本画とも違う。

どこかユーモラスで、それでいて迫力がある。

「これは本物を見てみたい。」

そう思って、神戸市立博物館へ向かいました。


美術館に着くと、入口でいきなり地獄太夫がお出迎えです。

「おぉ。」

まだ展示室にも入っていないのに、もうワクワクしています。

この時点で、脳のスイッチが一つ入りました。


展示室へ入ると、そのワクワクは一気に加速します。

《地獄太夫と一休》。

豪華な着物をまとった地獄太夫。

飄々とした一休。

足元には髑髏。

「えっ?」

「これ、一人で描いたん?」

人物ごとに、まるで別々の画家が描いたようにも見えます。

それなのに、一枚の絵として不思議なくらい調和しています。

「こんな描き方があるんや。」

ここで、ワクワク倍盛です。

※気になる方は、こちらの公式動画をご覧ください。

https://youtube.com/shorts/wSE8QmrcsTA?si=prLgBw987AIDkD5x


次に目を奪われたのは、《鐘馗騎象図》。

赤一色。

それだけなのに、象の重さも、鐘馗の迫力も、小鬼たちの動きも伝わってきます。

「へぇ……。」

「こんな表現もあるんや。」

また一つ、知らない世界に出会いました。


さらに会場で知ったのが、この展覧会の約60%が日本初公開の作品だということです。

「なんや、それ、先に言うてぇな(笑)。」

そんな情報まで加わると、今度は脳の別のスイッチが入ります。

今日は、たまたま美術館へ来たのではありません。

今まで日本では見ることのできなかった作品と出会えた日だったのです。


この日、嬉しかったことは二つありました。

一つは、河鍋暁斎という、とんでもない画家に出会えたこと。

私は美術館へ行くのが好きです。

美術書も読みますし、原田マハさんの小説もよく読みます。

浮世絵や伊藤若冲に夢中になった時期もありました。

それでも、河鍋暁斎は知りませんでした。

「まだ、こんな画家がおったんや。」

その発見だけでも十分に幸せです。

でも、本当に嬉しかったのは、もう一つの方でした。


まだ知らない世界が、こんなにも残っていたこと。

若い頃は、「知らない」ということを、どこか恥ずかしく感じていました。

でも今は違います。

知らないから、驚ける。

知らないから、感動できる。

知らないから、世界が広がる。

そう思うと、「知らない」ということが、何だか嬉しくなってきます。


脳科学では、新しいものとの出会いや、「へぇ!」という驚きは、脳の報酬系を刺激し、ドーパミンの分泌につながることが知られています。

だから、展示室を歩きながらワクワクが止まらなかったのも、不思議ではありません。

人の脳は、「知らない世界に出会うこと」が大好きなのです。

だから子供は、「なんで?」「これ何?」を繰り返します。

そして、大人にも、その脳はちゃんと残っています。


博物館を出ると、神戸の街は何も変わっていませんでした。

でも、私の世界は少し広がっていました。

河鍋暁斎という画家を知ったからではありません。

まだまだ知らない世界が残っている。」という喜びでした。

そのことが、何だか嬉しかったのです。

次は、どんな「へぇ!」に出会えるでしょう。

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