サッカー男子ワールドカップの開幕を間近に控え、世間の盛り上がりも最高潮に達しつつある。4月に行われた代表発表において、サッカーファンの枠を超えて多くの人々の感動を呼んだシーンがある。それは、アジア史上最多となる5回目の選出を果たした最年長、長友佑都選手の流した涙だ。
その涙は、自分が選ばれたことに対する歓喜の涙ではなかった。永年、ともに日の丸を背負い、厳しい予選を戦い、苦楽をともにしてきた仲間が選出されなかったことを知った瞬間に、その無念を想って流した涙だった。この「他人の痛みを自分のことのように感じる心」や「人を慮る心」は、単なる道徳的な美徳にとどまらない。実は私たちの脳や身体に多大なプラスの効果をもたらすことが、近年の脳科学や医学の研究で明らかになっている。
脳科学の分野では、他人に共感したり親切にしたりする際、脳内で「オキシトシン」という神経伝達物質が分泌されることが分かっている。オキシトシンは通称「幸せホルモン」とも呼ばれ、自律神経を整えてストレスを軽減し、脳の疲労を回復させる効果がある。つまり、長友選手のように仲間を想って涙を流すとき、脳内では強いストレスケアとリラックス効果が同時に生まれているのだ。
さらに、他者を思いやる広い視野を持つ人の方が、脳の「前頭葉」が刺激され、記憶力や思考力といった認知機能が維持されやすいという研究データもある。自分のことだけに汲々としているよりも、利他的な感情を持つ人の方が、脳がいつまでも若々しく健康に保たれるとことになる。
この「脳の若々しさ」は、実は私たちの身体の健康、特に「筋肉の衰え」を防ぐことにも密接に関わっている。人間は年齢を重ねるにつれて筋肉量が減少していく。一般的に筋肉量は30代から年間約1%ずつ減少し、70代を迎えると年間3〜5%という加速度的な減少を見せる。これが「サルコぺニア(筋肉量減少症)」と呼ばれる症状だ。
サルコぺニアが進むと、活動量が減り、脳への刺激も少なくなってしまう。だからこそ、脳を活性化させて「何かに挑戦しよう」という意欲を保つことが、肉体の衰えを防ぐ第一歩になる。長友選手が最年長でありながら今なおトップコンディションを維持し、誰よりも熱く走り続けられるバイタリティの源は、強靭な肉体だけでなく、仲間を深く慮ることで脳と心を常にポジティブに保つ「共感の力」にもあるのかもしれない。
私たち一般人も、サルコぺニアに負けない心と体を作るために、できることから始める必要がある。対策の基本は「食事」と「運動」だ。まずは日々の食事でタンパク質の摂取を意識的に高めること。そして運動面では、ウォーキングなどの有酸素運動に、スクワットや懸垂といった筋トレ(レジスタンス運動)を組み合わせることが効果的だ。
迫りくるワールドカップ。長友選手が魅せる熱いプレーやエールとともに、彼が体現する「人を慮る心」の大切さにも、ぜひ注目して応援したい。
最高の景色を見せてくれ! がんばれ、Nippon!!

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